バイクインプレ日記

バイクは「体重移動では曲がれない」のか?

 

 

バイクは体重移動では曲がれないというプロフェッサー氏の動画

「モーターサイクルプロフェッサー」なる人物の以下の動画を見た。

 

「モーターサイクルプロフェッサー」氏は元ヤマハの技術者、T氏である。動画アカウントで明言はしていないが、特に隠すつもりもないようだ。

 

T氏、ちょっと検索しただけでも数々の輝かしい業績が出てくる。機械としてのバイクを知り尽くしたまさにエキスパート中のエキスパートである。最近はメディアにも登場しているようだ。

 

さて上の動画を全て見る暇のない方に内容を一言で言えば

「バイクの正しい曲がり方は逆操舵である」

ということである。そしてそれを意識すれば楽しく走れるのだそうだ。

 

もっと詳しくは以下の記事を読むと良く分かる。

明言されてはいないが、上記もプロフェッサー氏によるものだろう。内容が全く同じである。まあ同一人物か別人かはどうでもいい。重要なのは記事の中身だ。「体重移動で曲がる」は「神話」「伝説」だそうである。

 

ついでに以下の記事も同じような内容。これもプロフェッサー氏だろう。

こちらでは体重移動で曲がるのは「都市伝説」だそうな。

 

体重移動では曲がらないのか

本当に体重移動では曲がらないのか。そんなことはない。以前に別記事で紹介した下の動画。どう考えても体重移動だけで曲がってる。

 

これに対してプロフェッサー氏も以下の動画で解説しているのだが、

このライダーのボディアクションを解説して

「左に曲がる時は右に体重移動し、右に曲がる時は左に体重移動をしている」

「体重移動派でこんな説明してる人見たことありません」

「だから曲がるときは逆操舵!」

え?いやいや、体重移動で曲がってますよね、これ?体重移動の方向についてはステップからの反力で身体を動かすんだからその通りだと思うけど、体重移動で曲がってることには変わりないですよね?ハンドルからの逆操舵なんて絶対にしてないですよね?体重移動じゃ曲がらないんじゃなかったっけ?それともこれは体重移動とは違う何かか?

 

逆操舵だけで曲がれるのか

では逆操舵だけで曲がれるのか。間違いなく曲がれる。その確たる証拠は以下の動画。ヤマハのモトボットである。このロボットは人間の体幹に相当する部分は剛体で一切の体重移動はできない。つまりハンドル操作だけで曲がっているのである。

 

またプロフェッサー氏は事故後のレイニーを引き合いに出して、体重移動なしで走れてるじゃないかといささか煽り気味におっしゃっているが、

レイニーはC6の脊髄損傷なので肩から下はほぼ動かない。指も動くかどうか微妙なところだ。それでもここまで走れている。

確かにバイクは逆操舵だけで曲げることができる。

 

体重移動と逆操舵どちらの影響が大きいのか

それでは体重移動と逆操舵、どちらの方がバイクを曲げる際に影響が大きいのか。これはネットを軽く調べてみた程度では分からなかった(一応学術論文でステアからの入力の影響が大きいという記述はあった。かなり昔のものだが)。

なので大変恐縮だが、私の主観で語らせていただく。

結論から言うと恐らくこれは逆操舵の方が影響が大きい。

 

私も上の動画とはレベルが違うが、ハンドルに一切触れることなくコーナーを曲がったことがある。見通しのいい峠の下りでハンドルから手を放して緩いコーナーを曲がってみたのだ。曲がれることは曲がれるが、びっくりするほど曲がり方は弱い。

おかしいな、バイクはハンドルになるべく力をかけないで乗るのが正解ではないのか?ハンドルに手を触れなければ究極に正しい乗り方のはずだが。

アクセルのオンオフができないからピッチングモーションが作れないのか?いや、クラッチ切ってたってもっと曲がる。

上体が安定しないからうまく体を動かせないのかと思い、タンクを持って体を安定させて再チャレンジしたが結果はほぼ同じ。

そこでハタと気づいた。「そうか、普段は無意識に逆操舵してるんだ!それがないからこんなに曲がらないんだ!」

 

次は試しにできる限り逆操舵のみを意識して曲がってみた。人間には立ち直り反応というものがあり、身体が傾けば平衡を保つために頸部や体幹が側屈するため完全に重心移動を封じることはできない。まあそれでもできる限り身体が剛体になったつもりで腕のみの操作で曲がってみる。

普段体重移動を意識して曲がってる時よりは曲がらないし、なんだかフロントから滑りそうな不安感があるが、ハンドルから手を離して曲がってる時よりは曲がりやすい。

以上のことから少なくとも曲がり始めにおいては逆操舵の方が影響が大きいと個人的には感じた。

 

しかしそれでも私は意識的に逆操舵をすることはしない。

 

 

私が逆操舵をしない理由

私が逆操舵を積極的にしないのには二つ理由がある。

まず一つ目はそれが人間の自然な感覚に反しているから。

皆さんは初めて補助輪なしの自転車に乗れた時のことを覚えているだろうか。カーブを曲がる時、最初は車みたいに曲がりたい方向にハンドルを切ったりして曲がろうとしたのではないだろうか。最近自転車に乗れるようになったウチの息子がそうだし、私もそうだった。そしてだんだん慣れてスピードが上がってくると自転車を傾けないとうまく曲がれないことに気づく。そして自然と曲がる側に少し身体を傾ける、そんなプロセスを経て次第に上手く曲がれるようになる。みんなそんな感じではないだろうか?

さて、ここで聞きたい。自転車の運転を習得する過程において曲がりたい方向とは逆にハンドルを切るなどという動作をした人はいるのだろうか?おそらく皆無ではなかろうか。

やってみると分かるが曲がりたい方向と逆にハンドルを切るというのは思いの外に怖いものである。なんというか人間の自然な感覚、ガンダムの富野御大風に言うなら人間の生理に反しているのである。私は楽しむためにバイクに乗っているのだからわざわざ不安に感じるような動作を加えたくはないのだ。

 

そして二つ目の理由は、これが最も大きいのだが、逆操舵で乗っても全然面白くないから。

バイクに乗ることで感じる楽しさはいろいろあると思うが、個人的にはバイクを寝かせて、寝かせた状態からアクセルを開けシートからリアタイヤに荷重をかけて曲がっていく、そのプロセスが最も楽しさ、快感を味わえるのだ。

これを逆操舵でやるとどうなるか?例えば左に曲がるとき左のハンドルを軽く押し続ければ確かにその方向にバイクはスーッと寝ていく。だがこの時に感じるのは自分がバイクを「寝かせる」というよりバイクが「寝ていく」感覚なのだ。なんというか自分が能動的に寝かせているというよりスイッチを入れるとそれに従ってバイクが自動的に寝てくれる、そんな感じなのだ。

バイクという乗り物は自身の一挙手一投足がダイレクトに挙動に反映する乗り物である。どんなに電子制御が発達してもその基本は変わらない。ステアリングという機械を介して操作する四輪とはそこが違う。だからこそ小手先でハンドル操作して寝かせていくなんて乗り方には楽しさを一切感じないのである。ダイナミックに身体を動かし操ってこそバイクは楽しいのだ。ハンドルで曲がりたければ四輪にでも乗ってればいい。その方が安全だし快適だ。

 

二輪車の物理とライテクを混同してはならない

以上に述べた乗り方はあくまで「私の」乗り方である。これを「正しい」乗り方だ、などというつもりは毛頭ない。逆操舵で乗るのが楽しいのならそうすればいい。

 

さて、プロフェッサー氏は逆操舵で乗ることをなぜ「正しい」と言うのだろうか?そこには二輪車の物理的特性とライテクの混同があるのではないか。

 

バイクに限らず二輪車が曲がろうとするとき、曲がる方向とは反対にハンドルが切れてから曲がる方向に車体が傾いていくのは疑いようのない事実である。それは難しい数式を理解できなくても二輪車のフロント回りの構造を見てみればなんとなくイメージはできるのではないだろうか(その辺のイメージについてはいずれまた書きたいが長くなるのでここでは割愛)。

こちらのページではそれが実証的に示されている。

しかし、だからといって、「二輪車がリーンするときにハンドルが逆に切れる」=「曲がるときにハンドルを逆方向に切るのが正しい乗り方」となるものだろうか?

そもそも「正しい」とは何をもって正しいと言っているのか?二輪車の物理特性に人間を合わせることが「正しい」乗り方なのか?

もちろん物理に反するようなことをするのは正しくない。というかそんな乗り方ではそもそも曲がれない。しかしそんな物理を知らない子どもだって自転車で曲がれるのである。要するに逆操舵という物理を知らなくたって人間はそういう操作を自然に行っている。

先ほど私は逆操舵をしないと書いたが、それは意識してハンドルからの入力はしないということであり、それをやっていないということではない。ハンドルから手を離したらうまく曲がれなかったという経験からしても無意識のうちにそれはやっているのである。いや、むしろ、体幹を硬直させて身体のダイナミックな動きを阻害するくらいならハンドルに力がかかったっていいと思っているので、結果としては積極的に使っている方かもしれない。

 

だが身体が勝手にやっていることをわざわざ意識してやることは正しいのだろうか。例えばバイクの教習で「バイクはハンドルを切った方向と逆の方向に曲がるから、右に曲がるときは左にハンドルを切りなさい」と教わったとしよう。免許取りたてで公道に出て、目の前に障害物があった、その時にかわしたい方向と逆の方向にハンドルを切る、なんてとっさの判断でできるものだろうか?これが「正しい」乗り方なのだろうか?

 

アドバンスドテクニックとして理解したうえで使うなら逆操舵もありだろう。青木宣篤選手もメディアでそのような形で言及している(ご丁寧に編集から読み物として読むにとどめて実践しない旨注意書きまでなされている)。

 

しかし「正しい乗り方」とまでいうのであれば免許取りたてレベルの人にも適応できるものであるべきだろう。

 

思うにプロフェッサー氏はバイクの物理的特性にばかり目が向いて、人間という動作主体に対する関心が低いのではないだろうか。しかし乗り方、つまりライテクに関しては人間に対する視座が抜け落ちてしまっては語ることができないはずだ。ライテクとは人間の身体や意識に対する洞察がなければ語れないものではないか?

 

ネモケンさんはコーナーリングにおいて「脇腹に寄りかかる」というような主観的イメージを語る。和歌山さんは古武道の動きなどを取り入れて身体運動からライテクを探求しようとする。どちらも主体は人間だ。バイクではないのだ。バイクは人間が楽しむための道具にすぎない。主は人間で、バイクはあくまで従の立場であるべきだ。

 

「乗り方」という人間の行為、動作に話が及ぶなら、バイクの物理的側面だけで語れるはずがないのだ。

 

どうせなら議論を

それにしてもプロフェッサー氏もそこまで自説に自信があるのであれば、ネモケンさんや和歌山さんと議論してみたらいいのではないか。お二人とも積極的な逆操舵には否定的な方だ。メディアにコネもあるようだし、SNSや動画で中途半端に素性を隠して素人を相手にするよりよっぽど生産的ではないか。

技術者視点からの正しいライディングとプロのライダー視点からの正しいライディングについて、その相違がどこから生じるのか議論してみたら非常に興味深い話になるはずだ。

例えば体重移動でバイクをコントロールしていると感じているライダーになんらか計測器をつけて、実際にはステップ、ハンドル、シートなどにどの程度の力がかかっているのか、そんなことを技術者とライダーが協力して記事にしたら楽しいではないか。

 

最後に

最後にひとつ。元とはいえメーカーのエンジニアが動画やSNSで素人を小馬鹿にするような態度をとるのは見ていてガッカリするし、正直気分が悪い。個人的にはヤマハの企業イメージは大きく下がった。今までバイクもギターもヤマハ党だったけど、これからはヤマハはねえなと思う。少なくともバイクに関しては。バイクに罪はないのは分かってはいるが・・・。

 

プロフェッサー氏が自己承認欲求を満たしたいのではなく、本気で自身が信じる理論を啓蒙したいならもう少し態度を考えるべきではないか。動画やSNSで上からモノ言ってたって人はついていきやしない。人間の心は機械ほど単純じゃないからな。

 

※ライテクを学ぶならこちらがおススメです。このマンガの作者は上の動画でノーハンド8の字を決めている「ばどみゅーん」さんです。

【シートバッグ】Henly Begins DH-722レビュー

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購入動機

バイクに箱とかバッグをつけるのって、デザイン的な問題とか、運動性への悪影響とかであんまり好きじゃないんだけど、あると便利なのは間違いなくて、ツーリング中にちょっとコンビニによって食べ物や飲み物買うなんて時には本当に重宝する。

そこで比較的デザイン的に目立たず、また取り外しが容易なシートバッグを検討することにした。

いくつか候補があったんだけど、今回はデイトナが展開しているHenly BeginsというブランドのDH-722を購入することにした。

 

着脱

購入の決め手となったのは着脱の容易さ。

上の写真のようにX状のベルトを置いて上からシートをはめ、バッグ本体とベルトをバックルでつなぐだけ。

実は以前にも似たようなシートバッグを使っていたことがあるんだけど、それはベルトとバッグ本体はバックルで簡単に着脱できるんだけど、ベルトはシートに巻きつけなければならず、それを着け外しするのは少々面倒だった。これだとタンデムシートを外せば簡単にベルトも外せる。バイク単体で写真を撮りたい時なんかにとても便利。

 

容量

容量は7~12リットルの間で可変。

 

横のジッパーを開けることで蛇腹状に上に伸びて容量を増やすことができる。

 

ジッパーを閉めた状態だと500mlのペットボトル5本でちょうどいい感じ。

 

ジッパーを開けると10本くらいは余裕で入る。頑張れば13本くらいはいける。

 

13本入れてトップを閉めるとこんな感じ。

けっこうパツンパツンだけどジッパーを閉めるのに苦労するというほどではない。

 

 

 

その他

フタの裏部分はこういうメッシュのポケットになってる。

 

キャリングハンドルがついていて持ち運びに便利。

 

肩掛け用のストラップも付属。

 

レインカバーも付属。

 

使ってみた感想

やっぱり便利。例えば真夏のツーリングでも標高が高い所に行くとけっこう気温が低く、メッシュジャケットだと寒いこともあるが、そういう時にここに一枚防風インナーを入れておけばすぐに取り出して着ることができる。

リュックを使うっていう選択肢もあるけど、個人的には身体の動きが制限されちゃうのが嫌なのと、エアバッグジャケットを常に着用しているから、その作動に影響しそうであんまり使いたくないのだ。

最初は必要な時だけつけて、それ以外の時は外しておこうと思ってたんだけど、結局便利さに負けてつけっぱなし。まあそんなにバイクのスタイルを崩さないし、いいや。

今回はなかなか良い買い物をしたと思う。

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ニンジャ1000(2019)インプレ

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実に1ヶ月半ぶりにバイクに乗った。仕事の疲れか、イマイチ調子が出なくて、のんびり走れそうなW800にしたかったんだけど、ちょうど貸し出し中で仕方なくニンジャにした。

 

 

乗ったシチュエーション

いつも通りレンタル819南箱根店で1時間レンタル。ワインディング中心に試乗。気温は30℃超えで走り始めからタイヤの温まりに問題なし。

 

ポジション 取り回し

セパハンだけどかなり高めなので上体の前傾度は弱め。ステップの位置もやや高め。ニンジャ650によく似たポジションだけど、ちょっとだけ大柄な印象。シートが変に前下がりじゃなく、クッション性がいいのに柔らかすぎないのもgood。

 

足つきは身長180cmで足裏が全部着いてほんのちょっと膝が曲がるくらい。このクラスとしては平均的だろう。

 

サイドスタンドを払うために跨って車体を起こすと車重235kgからは想像もつかないくらい軽く感じる。マスが集中してるんだろうか。

取り回しもやや車体が大柄に感じるものの、このクラスとしてはとても軽い。

 

エンジン

低回転から非常に粘りがある。2速1500回転くらいで余裕でノンスナッチで走れる。前に乗ってたXJR1300だと2000回転以下はちょっと厳しいものがあったが、ビッグバイクはそのくらいの回転数でもそれなりのスピードになるから、ここが使えるかどうかで(特に街中の)扱いやすさが全然変わってくる。

クラッチがめちゃくちゃ軽いこともあって、混んだ市街地も走りやすいに違いない。

で、そんな低回転から開けていってもアクセルに対して開けた分だけちゃんと加速してくれる。それでいて開け始めのドンつきはないからすばらしく扱いやすい。

高回転になるほどパワーが増すけど、高回転でもレスポンスがシビアすぎないので条件が許せば誰でもそのパワーを、使いきれるとまではいかなくても、それなりにコントロールすることはできそう。もっとも公道を走るうえでは6000回転くらいまでで十分こと足りちゃうんだけど。実際、今回の試乗ではあえて高回転まで回した時以外は、2速と3速の3000~6000回転くらいまでしか使わなかった。そのくらいの回転域でも十分すぎるほどパワフルである。

6000回転くらいからは微振動があるんだけど、今言ったように公道でそこまで使うことはほとんどないだろう。

排気音は控えめで、同社の同じ4気筒であるZ900RSがかなり勇ましかったのとは対照的。ツアラーというバイクの性格上、その方が望ましいと判断されたんだろう。

 

ハンドリング 車体

普段2気筒に乗ってるので走り出してすぐはフロント周りの重さを感じるけどすぐに慣れる。

 

フレームの剛性が高いのか車体全体がかなりガチッとしてる印象を受ける。

サスは柔らかいわけではないのによく動く。でもフワついた感じは全然なくて非常に上質な動きをする。乗り心地も良好。試しにわざと減速帯のあるカーブに突っ込んでみたが、衝撃を伝えはするものの、挙動を乱すことはなかった。

 

寝かし込みは車重を考えるとかなり軽いと言っていいだろう。それでいてフロント周りにどっしりとした安定感も感じる。

 

寝かすとそれなりにしっかり舵角がつくタイプだが、切れ込むというほどではなく、程よい手応えといった感じ。感心したのは上りでも下りでもあんまりハンドリングが変わらないこと。寝かす時にハンドルに感じる手応えが常に一定している。

 

車重があってタイヤも太いんだけど大げさにハングオフなどしなくともよく曲がる。いや、公道のペースならそんなことしない方がよく曲がる。僕がいつも重視してる、公道で常識的なペースで走っても楽しめるハンドリングだ。

 

大小色んなコーナーを走ったけど、意外にもタイトなワインディングをちょこちょこ走る方がスピードの乗る大きいコーナーを走るより楽しかった。

 

ブレーキはサスがいいこともあって効きもコントロール性も抜群。

 

まとめ

キャラクターとしては同社のニンジャ650と似ていて、650の性能を全体的に高めて仕上げを上質にした感じか。

個人的には軽くて気軽に乗れる650の方が好みだが、高速を使って一気に長距離移動なんて場合は1000の上質なサスと余裕のあるパワーは精神的、身体的余裕につながるだろう。

当然所有欲を満たせるのも1000の方である。

いずれにしろとても良くできたバイクであることは間違いない。最初に書いたが、今回はなんか疲れててライディングもあんまり調子が出なかったにも関わらず、そこそこ楽しめた。それはこのバイクの懐が深いことの証左だろう。

 

ディテール

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効きもコントロール性も最高なラジアルマウントキャリパー。

 

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リモコンアジャスターでリアのイニシャル調整が簡単にできる。タンデムの時などに重宝しそう。

 

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伸び側減衰力はここで調整できる。

 

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そびえ立つようなでかいタンク。幅が広いので普通に座ると太もものフィット感はちょっと悪い。最近のバイクにしては珍しく、プラスチック製のタンクカバーではなく、これ自体がタンクのようだ。

 

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視認性のいいメーター。やっぱりタコメーターはアナログ表示に限る。

 

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座面が広く腰があるシート。長距離でも疲れなさそう。荷重もかけやすい。

 

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ハンドルはセパハンだがかなり高め。

 

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カワサキがよくやる左右に2本ずつ排気口のあるマフラー。なかなかカッコいい。

 

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バックミラーの視認性良好。

 

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かなりレイダウンされたリンク式リアサス。

 

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ニンジャ系共通のフロントデザイン。カッコいいです。

 

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このスライダーが左足に干渉してすげー邪魔だった。

 

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試乗車はフロントがミシュランでリアがピレリというチグハグな状態。こういうのはハンドリングが変わっちゃうから勘弁してほしい。

THANKO 電動エアコンプレッサー「ハンディエアポンプmini2」レビュー

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ちょっと前のことだが電動エアコンプレッサーを購入し、それがなかなか良かったのでレビューしたい。

 

 

概要

モードがボール、自転車、バイク、車の4種類から選択できる。

空気圧を指定してボタンを押せばあとは指定した空気圧まで自動で空気を入れてくれる。

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アタッチメントがボール用、自転車用等複数ある。

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エアバルブへの装着はねじ込むタイプなので手で押さえておかなくてもいいし、エア漏れする心配もない。

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最大出力は150PSIとのことだが、本当のところそこまでパワーがあるかは分からない。ただ自転車に5.0Kg/cm(71PSI)まで入れたところ全く問題なく作動した。

 

バッテリー容量は3900mAhで連続25分使用可能とのこと。充電時間は2Aで約3〜4時間。外部出力がついているので予備バッテリーとしても使用できる。

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夜間作業用にLEDライトもついている。

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良かった点

とにかくエア入れが楽。それまでは足踏み式ポンプを使って、何十回も踏まなきゃいけなかったのがボタン一回で済むんだから。

バイクならまだ人力で可能かもしれないが、車ではとても無理。給油のたびにいちいち空気入れるのも面倒だし、家でいつでも簡単に空気が入れられるのは本当に助かる。

180/55 17のタイヤの空気圧を0.2上げるのにかかる時間は5秒くらい。時間も大幅に短縮できる。

 

イマイチな点

設定エア圧より多く空気が入っていた場合、それを抜く機能はない。これがあるともっと便利なんだけど。まあ実際はこれで空気を入れたらそのあとエアゲージでちゃんと測定するから、多めに入ってればそこで抜けばいいんだけど。

あと、コンプレッサーなのでそれなりの音はする。夜の使用は控えた方がいいかも。

 

 

残念ながら同じ製品は廃番になってしまったようだが、後継が出てるし、似たような製品はたくさんあるので評判の良いものを選べばいいと思う。

【排気量不問の】最初の一台にお薦めのバイクBEST5!【バトルロワイヤル】

 

以前、250ccで初心者におすすめのバイクを記事にしましたが、

今は教習所で最初から大型を取ることもできるので、最初の一台に大型バイクを選ぶ方もいらっしゃると思います。そこで今回は排気量問わず、最初の一台におすすめのバイクを記したいと思います。

あくまで私がこのブログを書き始めてから乗ったバイク限定ですので、車種に限りがあり、また偏りもあると思いますが、メディアと違いメーカーに忖度しない素の感想ですので、信憑性には自信があります。

評価の基準はいつも言ってるように「乗って楽しめるか」です。

それでは行ってみましょう。

 

 

 

第5位 MT-07

個人的にはナンバーワンなのですが、エンジンのツキがアクセルを開けた時も閉じた時も非常にいいので、初心者の方にはやや難しいと感じるかもしれません。

しかし軽量な車体や素直なハンドリングは初心者の方にもおすすめできるポイントです。

 

第4位 CRF1100L

いきなりリッターバイク?!と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、CRFはハンドリング、エンジンともに非常に扱いやすく、仮に最初の一台に選んだとしても後悔しないと思います。DCT仕様ならさらにとっつきやすいでしょう。

弱点はほとんどないのですが、強いて言えばやはり車体が大きいことでしょうか。初心者の方には車体が小さく軽い方が不安感が小さいのも確かです。しかしシート高は低く、慣れてしまえばどうということはないと思います。

 

 

第3位 ニンジャ650

パワーの出方がMTほど鋭くなく大変扱いやすいです。ハンドリングもゆったりしており神経質なところがないです。カウルがありつつハンドルはさほど低くないので街中から長距離ツーリングまで使える万能性も持っています。

弱点としては、シートの前下がりが強いのが気になると言えば気になるかなというくらいです。

 

第2位 ジクサーSF250

非常に楽しいバイクです。最初の一台にこれを選べばバイクに乗る楽しみを堪能できると思います。扱いやすく使いきれるエンジンパワーやスポーティーでありながらクイックすぎないハンドリングなどバイクを楽しむためのエッセンスが詰まっています。ややスポーティーな前傾ポジションですが、YZF-R25やニンジャ250よりもハンドル位置は高く、街中で乗っても疲れないと思います。

弱点はほとんどありませんが、最初の一台ならもう少しハンドルが高い方が扱いやすいかもしれないです。ただ、気になるようでしたらハンドルアップスペーサーなども売っているようですので、そういったもので対処してもいいかもしれません。

 

第1位 VTR250

現行車でないので申し訳ないのですが、乗って楽しいという点では、最初の一台としてこれ以上おすすめできるバイクを私は知りません。低回転で粘りがあり、高回転でも吹け上がりの鈍らないエンジン、安定感と軽快感が絶妙にバランスしたハンドリング、どんなシチュエーションにも対応するポジションなど初心者から上級者まで誰にでもおすすめできるバイクです。しかも壊れません。街乗りからジムカーナー、サーキット走行まで対応できる万能バイクでもあります。

新車では手に入りませんが、2017年まで販売していたので程度のいい中古も多いです。前期型でも性能としては十分です。

しかし一点、唯一絶対の弱点があります。それはABSがついていないこと。いざという時にABSほど頼りになる装置はないです。パニックブレーキにおいてフロントをロックさせずに最大の効力を発揮させることはプロのレーサーであっても至難の業です。力任せにブレーキを握りさえすれば最大の効力を発揮できるのは初心者のみならず全てのバイク乗りにとって安全面において絶大なアドバンテージをもたらします。エアバッグや自動ブレーキを装備できないバイクという乗り物においては唯一のアクティブセーフティーでもあります。

 

今回は「乗って楽しめるか」という基準で選んだのでVTRを1位にしましたが、ABSが装備されていないのは正直痛いです。これからバイクを買うのであればやはりABSが装備されているバイクを選ぶことをおすすめします。

【MT-07カスタム】MT-07にスリッパー&アシストクラッチ導入

前から言ってるけどMTはクラッチが重い。正確に言うと最近のバイクがやたら軽いので相対的に重く感じる。

 

なんとかしたいと思ってネットを漁っていたところYZF-R7のスリッパー&アシストクラッチが流用できるとの情報が!

ちょうど車検だったのでついでにやってもらうことにした。

 

 

必要な部品は下の図で囲んであるところ。

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クラッチプレートの交換くらいなら自分でやれないこともないけど、ちょっと時間がとれないので今回はバイク屋さんにお任せ。

 

さてここからはインプレ。

まずはスリッパー&アシストクラッチの「アシスト」の部分。

最初にクラッチを握ってのファーストインプレッションは

「あれ、思ったほど軽くない」。

いや、軽いには軽いんだけどニンジャ650みたいに250かと思うほどの感動的軽さはない。ノーマル比で30%減といったところか。ただこの30%がクラッチを多用する場面では効いてきて、箱根新道の渋滞で普段は手首が腱鞘炎気味に痛くなるところ、今回は全く痛くならなかった。これは素晴らしい効果だ。

 

 

 

次に「スリッパー」の部分。

これはシフトダウン時の変速ショックがノーマル比50%減といったところ。4速以上(4→3速以上)のシフトチェンジならプリッピングしなくとも大きなショックを感じることなくシフトダウンできる。

回転が上がっている場合多少プリッピングしてやった方がスムーズだが、それもノーマルに比べれば半分程度あおるだけで十分だ。

 

さらに副次的効果もあった。MTはクラッチ容量が小さいのであまり加速してない時に雑にシフトアップするとギクシャクしてしまうことがあるのだが、スリッパー&アシストクラッチを入れてからはそれがほぼなくなった。これは街中を低速で、2速と3速を頻繁に行き来しながら走ってるような時に非常に効果を感じる。

 

かかった費用は部品代が34,000円、工賃が12,000円の合計46,000円。これを高いと見るか安いと見るかは人それぞれだが、個人的には十分それだけの価値があると感じた。

 

興味がある方はお試しを。

NS250F(1984)インプレ

ホンダ公式(https://www.honda.co.jp/news/1984/2840425.html)より

メーターだけだけど、一応乗ってた証拠ということで

過去を思い出しながらインプレするシリーズ。

 

 

乗ったシチュエーション

2010年頃、行きつけのバイク屋さんに転がってた不動車をタダでもらってきてレストア。2年ほど所有。ほとんど峠のみ走行。多分3回くらいしか給油してない。1回だけサーキットを走った。

 

ポジション 取り回し

今のバイクに比べるとタンクが長くてハンドルが遠い。ただハンドルの位置は比較的高いのでそんなに前傾姿勢ではなかった。

80年代から90年代半ばまでのバイクはどれも今の基準からするとシートが柔らかすぎてリアタイヤに効率的に荷重がかけられないんだが、乗り心地はまあまあだった。

 

当時のバイクはどれもシッティングポジションが低くて、足つき性はだいたい良好。このバイクもそのご多分に漏れず両足裏までベッタリだった。座る位置が低いから擦ろうと思わなくてもステップやら膝やら擦っちゃうバイクだった。

 

取り回しは今の250と比べると確実に重い。車重自体も161kgとけっこう重いしね。一度ガス欠になっちゃって2キロほど押して歩いたんだが、翌日筋肉痛で体中痛かった。今のマスが集中したバイクならもう少しマシだったろう。

 

エンジン

一応ATAC(Auto controlled Torque Amplification Chamber)というヤマハでいうところのYPVSみたいな排気デバイスがついてて、そのためか発進に神経質にならないで済む程度には低速トルクがある。

 本領発揮は5000回転以上なんだが、後のNSRみたいに胸のすくような加速を望むのは土台無理な話。なんかモサっとした吹け上がりで、あんまり2ストらしい爽快感はない。初期型TZRの方がずっと速い。まあ向こうの方が後発だから当然と言えば当然なんだが。

低回転ばかり使ってると未燃焼のオイルがチャンバー周りにベタベタついてしまう。ナンバーなんかすぐ真っ黒。高回転まで回せばオイルも燃えてくれるんだけど、その代わり白煙がすごい。ひたすら環境に悪いバイク。一度筑波でのサーキット走行会に持ち込んだんだが、後続の人はさぞかし煙たかったろう。

 

ハンドリング 車体

よくフロント16インチは切れ込んでどうしようもなかったなんて話を聞くんだけど、少なくとも自分が乗ったことのあるフロント16インチのバイクではそんなこと感じたことはない。おそらくそれは、レースレベルで限界まで攻めた時にフロントの接地感がいきなりなくなってフロントから巻き込むように転倒するということがあったらしくて、そういう話が独り歩きしたんじゃないかと思う。まあそれもそれまでのレースシーンが前後18インチが主流で、いきなり2インチも径を小さくしたからそれに慣れなかっただけなんじゃないかとも思うんだが。

そういうわけで少なくとも僕なんかのレベルの人間が普通に走ってて特別乗りにくいなんてことはなかった。

このバイクもフロントの動きに関しては素直で特にクセはなかった。ただ前述したようにハンドル位置が遠いのでなんとなくフロントの接地感が感じにくいような気はした。

寝かし込みはエンジン同様2ストらしい軽快感はあまりなくてやっぱりモサっとしてた。ただその分安心感はあった。寝かせた状態からアクセルを開けてもあんまり旋回性は高まらなくて、筑波を走った時もなんとなく立ち上がりでアクセルを開けにくいような感じはあった。

 

ちなみにNSはRとFがあって、Rはフルカウル、Fはネイキッドというのがぱっと見の違いなんだけど、実は車体構成にも違いがあって、Rはアルミフレームにアルミスイングアーム、星形コムスターホイールなのに対してFはスチールフレーム、スチールスイングアーム、ブーメランコムスターホイールという構成だった。僕の乗ってたやつはなぜかスイングアームだけRのアルミ製になってたが、それがどの程度違いを生んでたのかはオリジナルのFに乗ったことがないので分かりようもない。

 

サスはかなり柔らかいが、当時のバイクはみんなこんな感じだった。サーキットを走っても特にどうということもなかったので必要十分な性能だろう。

フロントにはTRACというアンチノーズダイブシステムがついていて、動きが不自然と言われてけっこう嫌われてるんだけど、個人的にはそこまで違和感は感じなかった。ただ、このシステム、メンテが悪いとホントにフォークの動きを悪くするようで、その辺も嫌われる要因だったのかもしれない。

 

ブレーキはダブルディスクだけど今時のバイクに比べると効きもコントロールも悪いけど、それでもそれなりには走れた。一応ホースをメッシュに変えてたが、それだけでもだいぶマシになった。パッド交換すればもっと変わったと思う。

 

まとめ

このバイクを所有する前に何度かNSRに乗ったことがあって、その軽さ、吹け上がりの良さに感動して、そういうのをこいつにも期待したんだけど、全然期待外れだった。まあNSR並の完成度だったらたった1年で消えたりしないよねえ。

80年代のホンダはMVXといいこのNSといい2ストに関しては失敗続きで完全にヤマハ、スズキの後塵を拝してたんだが、NSRで一気に逆転してセールスでもレースでの戦績でも他社を寄せつけなかったんだよね。

NSは過渡期に生まれた可哀想な子とも言えるけど、NSでの90°Vツインの経験が後のNSR開発に道を開いたと考えればまあ無駄ではなかったのかもしれない。

ムルティストラーダ1260S(2019)インプレ

 

 

乗ったシチュエーション

レンタル819のタイムセールで安くなっていたので8時間レンタル。高速、峠、市街地とすべて走った。真夏なので走り出しからタイヤのグリップは最高。

 

ポジション 取り回し

跨っての第一印象はとにかくハンドル幅が広いということ。アドベンチャーとしては一般的な幅だろうが、普段乗ってるMT-07と比べると相当幅広な感じ。小柄な人にはちょっと広すぎるんじゃないだろうか。

ステップ位置はけっこう高くて、バックステップを入れてる僕のMT-07と変わらないくらい。積極的に身体を動かすには向いているが、身長180cmだともう少し低くてもいいかなという気はする。

シートは座面も広く、クッションも硬すぎず柔らかすぎずで、乗り心地がいいのに荷重もかけやすい。多少の前下がりはあるが、全然許容範囲。

タンクの形状が良くて、太もも全体がピタッとフィットするのもグッドポイントである。

 

足つき性は身長180cmで両足裏がついて少し膝が曲がる程度。まあそれなりの足つき性といったところ。シートが高いというより幅が広いのが影響していると思う。

 

取り回しは車重235kgにしては軽いとは言えるが、あくまでその車重にしてはということであり、絶対的な重さはそれなりに感じる。ただXJR1300とかCB1300SFみたいな4気筒ネイキッドよりは軽い。

 

エンジン

モードが「スポーツ」、「ツーリング」、「アーバン」、「エンデューロ」とあるのだが、時間の都合でエンデューロは試せなかった。

まずスポーツとツーリングについてだが、5000回転以下はどちらもあまり差がない。5000回転以上になるとスポーツはアクセルレスポンスがめちゃくちゃ鋭くて、正直な話、僕の腕では公道じゃまったく使いきれない。あまりにシビアで疲れてしまう。その点ツーリングであればまあなんとか使える程度にスポーティーで、ドゥカティのスポーツ性を僕程度の腕でもなんとか感じとれる。おそらく一般的には最も多用するのはこのツーリングモードだろう。

アーバンは全域にわたってアクセルレスポンスがかなりダルになっている。市街地では最も使いやすいが、開けると不自然にアクセルに対するツキが落とされているような印象であまり気持ちよくない。

以下は全てのモードに共通する点。

まず3000回転以下は使い物にならない。そうなると困るのが街中を走る時である。2速だと3000回転で約40km/h、4000回転で約60km/hなのでこれを使いたいところだが、レスポンスが良すぎて走りにくい。また4000回転を超えるとマフラーがけっこう勇ましい音を奏でてくれるのでそういった点でもせわしない。じゃあ3速ならどうかというと、3000回転で約60km/hなので、僅かでも速度が落ちると3000回転を割ってしまい、途端にトルクが薄くなってガクガクしてしまう。まあモードをアーバンにすれば2速でもさほど扱いにくさはないのだが、走りながらモードを切り替えるのは面倒くさいし、音がでかいのは変わらない。

それと5000回転を超えるとシート周りにかなり振動が出る。峠でガンガン走ってる時ならアドレナリンが出てさほど気にならないかもしれないが、淡々と走っているときにはちょっと不快。その点でもスポーティーに走る時以外は3000~5000回転という狭い領域を使わなくてはならない。ドゥカティはそういうものと言われればその通りなのかもしれないが・・・。

ちなみにギア比の話をすると、2速でも6000回転まで回すと90km/h近く出てしまう。峠をスポーティーに走る場合、常識的な範囲ならほぼ2速固定である。

あとクラッチが重いのも特に街中を走るうえではマイナスポイント。重いといっても最近のバイクがやたら軽いからそう感じるだけで、ひと昔前ならごく普通かむしろ軽いくらいなのだが。また油圧クラッチなのでワイヤー式に比べるとミートポイントが分かりにくい。走り始め一発目にエンストしたのをお店の人に見られたのは恥ずかしかった。

もっともクラッチに関してはアップ、ダウンともに対応したクイックシフター装備なので走り出してしまえばそんなに使わないで済む。ただシフトアップに関しては3000回転以上回ってないとかなり大きく車体を揺さぶることになる。

 

ハンドリング 車体

極低速ではフロントの内向性がやや強く、Uターンの際などはけっこうイン側の手で押すような形になるが、前述したとおりハンドル幅が広いのでさほど力を入れなくてもコントロールできる。40km/hくらい出してればニュートラルなハンドルの切れ方になる。

ドゥカティといえば決まった時のハンドリングは素晴らしいが、決まらないと全然曲がらない難しいバイクというイメージがあるが、ムルティストラーダに関してはそこまでの神経質さはない。ただ、ダラっと乗ってると操っているというより乗せられているような感覚がなんとなくあるのは確かである。ある程度エンジン回転を上げて、アクセルオンの時のトラクションも、オフの時のバックトルクもリアタイヤにしっかり伝え、ブレーキングでフロントに荷重を移して、ブレーキリリースに合わせてスパッと寝かせてやるとよく曲がる。なるほどこれがドゥカティなのかと思う瞬間である。そんなわけでリーンウィズで乗るより、ハングオフスタイルで腰を落とし、シートからしっかりリアに荷重する乗り方の方が楽しい。前述した高めのステップも効いてくる。前後タイヤの接地感も非常に高い。

しかしアドベンチャーというカテゴリーのバイクでそういう性格のハンドリングなのはどうなのかなと個人的にはちょっと思う。

 

サスペンションの動きはさすがの一言で僕の腕では素晴らしいしか出てこない。かなりピッチングが大きいにも関わらず不安感を抱くことは全くなく、むしろそのピッチングを生かして峠では楽しく走れる。けっこうな下り坂でのハードなブレーキングでもビタっと安定している。ふわついたところがないのに乗り心地も最高。セミアクティブサスは伊達じゃない。

ちなみにエンジンモードに合わせてサスのセッティングも変化する。個人的にはハンドリングに関してはスポーツモードが一番好みだった。ただ、モードによる違いはエンジンほどには大きくない印象だ。

また乗車前に一人で乗るのか、タンデムなのか、パニアを装着しているのか等のモードが選べる。

 

ブレーキは効きもコントロールも非常に優秀だが、たまたま僕の試乗した個体がそうだっただけかもしれないが、レバーの動きがやや渋いのが気になった。

 

まとめ

非常に高性能なバイクであることは間違いないが、エンジン、ハンドリングとも設定速度域が高すぎるのではないか。特にエンジンに関しては低速での粘りがあまりに足りない気がする。またハンドリングに関してもそういったエンジンの特性とあいまって楽しめる領域に達するとかなりのスピードが出てしまっている。楽しもうとペースを上げた結果、下のような目にも遭ってるし。

リッタークラスのアドベンチャーで僕が乗ったことがあるのは他にはCRF1100Lだが、あちらが常用域での扱いやすさが抜群だったのとは対照的である。まあ一口にアドベンチャーといっても、CRFがオフもかなり視野に入れた作りなのに対してムルティはオンロード色が強く、バイク自体の性格が異なるので単純に比較はできないが。


フェラーリやランボルギーニのように走りに振りすぎて実用性ゼロみたいな車があるように、公道じゃとても楽しめないバイクがあってもいいと思うが、それらが与えてくれるのは走る楽しみじゃなくて所有する喜びじゃないだろうか。少なくとも公道しか走らないのであれば。そういう価値観を否定する気は全くないが、個人的にはバイクは走ってナンボだと思う。ムルティはそこまでスパルタンなバイクではないが、残念ながら僕の中ではちょっと及第点には及ばない感じだった。

 

ディテール

「MODE/ENTER」と書いてあるボタンでモードを選んだり、パネルの表示形式を変えたりする。サスセッティングやエンジンのセッティングなども細かく設定できる。

その右側にあるのはクルコンのスイッチ。正直あんまり必要ない。

下はウインカースイッチ。バンク角に反応するオートキャンセラーがついているのだが、あんまり感度が良くなくて結局スイッチで操作することがほとんどだった。

 

 

スクリーンは3段階に調整可能。高速道路で向かい風だと低い位置ではちょっと頭が揺さぶられる。高めにセットするとほぼ無風に近い状態になるが、夏場は暑くてたまらない。ただどの高さにセットしてもハングオフで曲がるとスクリーンの境目が視界に入るのがちょっと気になる

 

 

右側のスイッチ。一番下のスイッチがメインスイッチ。長押しでオン。エンジン始動は赤いキルスイッチを上にスライドさせてセルボタンを押す。ちなみにセルはワンプッシュ式ではなくオーソドックスなかかるまで押すタイプ。エンジンを切る際はキルスイッチを下にスライドさせる。エンジンが停止した状態でメインスイッチを長押しするとハンドルロックがかかる。

 

 

キーはリモコン式。いちいち鍵穴に挿さなくていいのは楽。タンクキャップを開ける際はボタンを押すと鍵が出てくるので、それで開ける。




ゴージャスなラジアルマウントのブレンボキャリパー。

 

 

 


けっこう音がでかいマフラー。

 

 

 


乗り心地のいいシート。形状も良い。

 

 

 


太ももによくフィットするタンク。

 

 

ステップラバーは取り外し可能でオフロードブーツで乗ることも一応考慮されている。

 

 

クラッチケースにつま先が当たるのが最初はちょっと気になった。

【注意喚起】箱根新道は追い越しバカに気をつけろ!

 

 

本日、ドゥカティのムルティストラーダをレンタルして伊豆箱根方面へツーリングに行ってきた。その試乗記はまた後日書くとして、今回危うく死にかけたのでその顛末を注意喚起ならびに自戒として記すことにする。

 

目の前に対向車が!

7月27日11時頃、私は箱根新道の上り(静岡方面行き)を走っていた。登坂車線で先行車をパスして前方がクリアになり、左コーナーの立ち上がりでドゥカティのスポーツ性を試すべくアクセルをワイドオープン。すると目の前に信じられない光景が!

私の走ってる車線上を何故かベンツがトラックと並走しながらこちらを向いている。トラックを追い越そうと対向車線を逆走していたのだ。恐怖心を感じる間もなくパニックブレーキ!しかしなかなか減速しない!迫り来るバカベンツ!万事休すかと思った時、かろうじてバカベンツが自車線に戻りなんとか正面衝突を避けることができた。

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場所はここ。下から上っていくと、大観山に通ずる分岐のちょっと手前辺り。直線の距離は200m程度しかない。仮に自車と対向車が80キロで走っていた場合、直線の始まりから追い越しをかけても4.5秒以内に追い越しを完了しなければ衝突する。実際は直線に入ってすぐというわけにはいかないだろうから時間的猶予はおそらく2、3秒だろう。そんな所でもセンターラインを割って追い越ししようとするバカがいるのだ。

 

箱根新道特有の危険性

こうした事は箱根新道に限らずどこでも起こりうることだが、箱根新道では特にその危険性が高い。

箱根新道という道はライダー諸氏にとっては著名なツーリングルートだが、物流の大動脈という側面も持つ。そのため大型トラックやダンプ、トレーラーなどがひっきりなしに通る。本当は東名や246などを通ってもらいたいが、経費やルートの問題もあるだろうし、重量制限で箱根新道を通らざるを得ない場合もある。

箱根新道は急なカーブが連続するので、大型車は下りでもスピードを出すことができない場合がある。慣れないドライバーだと40キロ以下になってしまうこともある。

上り(登坂)は譲り車線が4ヶ所あるが、下り(降板)はずっと一車線で追い越せる場所はない。

そうするとそういう大型車を強引に抜きにかかるバカが出てくるのである。

実は私は通勤で毎日箱根新道を通っていのだが、そういうバカは数えきれないくらい見てきた(ダンプにでもぶつかって死んでくれりゃいいのにと思うが)。幸いなことに衝突事故になった例は見たことがないが、今回は自分自身が犠牲者になっていたかもしれないのだ。

 

自分自身の反省点

今回は対向車のはみ出しということで、ほぼ100%相手の責任といっても言いわけだが、それでも自分自身にも反省すべき点があった。

今回の乗っていたのはドゥカティのムルティストラーダ。言うまでもないが、ドゥカティはその高いスポーツ性が売りである。そのためダラダラ走っていても正直あまり楽しくはない。ムルティストラーダはドゥカティとしては比較的間口の広い多用途に使えるバイクではあるが、それでもやはりダラっと走っているといまひとつ面白くないのである。そのため普段よりかなりペースが速かったのは否定できない。少なくとも公道で常識的に許容される範囲は逸脱していたと思う。

振り返ってみると今回は「開けないとつまらないバイクなんだから開けるのはしょうがない」という自分勝手な理屈を正当化していた気がする。開けないとつまらないバイクなら我慢して淡々と走るべきだったのだ。上記のように箱根新道特有の危険性を承知していたのならなおさらだ。

 

正面衝突という事態であれば50キロでぶつかろうが100キロでぶつかろうがダメージに大した差はないのかもしれない。それでも50キロだったらなんらかダメージ回避のための手段を講じる余裕はできるだろう。

 

今回の件で得られた教訓

過ぎたことをいつまでも反芻して怖がっていても進歩はない。大事なのはそれをどう生かすかだ。以下に今回の件で得られた教訓を自戒の念を込めて記したい。

まずはとにもかくにも公道での常識的な速度を逸脱しないこと。いつも制限速度を守れというわけではなく、自分自身の限界の50%程度で、常に心に余裕を持って走ることが大切だ。峠も「攻める」のではなく「流す」程度にしなければならない。

それから装備には最大限の配慮をすること。今回はレンタルバイクということで普段装着しているエアバッグを使っていなかった。にもかかわらずジャケットのプロテクター類を動きにくいからという理由で外していた。これは慢心以外のなにものでもない。またグローブもレーシンググローブが破れてからプロテクターがついたものを使っていなかった。これも早急に対処しなければならない。

またワインディングを走る際には前に車がいない時こそ注意が必要だ。前に車がいないとつい気分よく飛ばしがちだ。だが正面衝突はほとんどが前に車がいない時に起こるのである。正面衝突自体まれなことではあるが、いざ起きてしまえばそのダメージは計り知れない。気持ちよく走れる時にこそ心にブレーキをかけ、しっかりと先を予測しながら乗ることが重要だ。

 

バイクで飯を食っているレーサーなら命をかけてバイクに乗らなければならないこともあるだろう。だが、我々素人ライダーがバイクに乗るのはあくまで趣味、楽しみのためなのである。楽しみの手段で人生が台無しになっては本末転倒ではないか。

私の夢は一生バイクを楽しみ続けることだ。そのためにはバイクで命を落としたり、大きなケガを負ったりすることはあってはならないのだ。

無事これ名馬。この言葉を肝に銘じたい。


追記

動画を撮ってみた。バカベンツ側からの視点。制限速度プラスアルファ程度の速度だが、直線の始まりから終わりまで8秒くらいしかない。こんな所でセンターライン割るバカがいるのだ。

 

 

VTR250(1998)インプレ

MT-07を車検に出している間の代車。メーター読み85,000キロ、実際は10万キロオーバーの最初期型VTR。過走行車なのでその点を割り引いて読んでいただきたい。

 

 

乗ったシチュエーション

高速、市街地、峠すべて走った。夏なのでタイヤの温まりに問題なし。

 

ポジション 取り回し

最近のMTやCBなどの250ネイキッドと比べるとステップ位置がかなり高くて後退している。身長180cmだと正直やや窮屈。90年代後半までのホンダは割とこういう設定が多くて、CB400SF(NC31)なんかもライバルのXJRやZRXと比べるとかなりバックステップ気味だった。この個体はハンドルがノーマルより高めのものに交換されているんだけど、このステップ位置だとノーマルの方がバランスはいいかもしれない。ちなみにマイナーチェンジ以降は、この個体と同じくらいの高さのハンドルになっている。

ハンドル位置は前述したようにやや高めのハンドルバーに交換されているにも関わらず今時のバイクと比べるとやや遠め。そのため最近のバイクと比べるとフロントタイヤが遠いような印象を受ける。

シートはそこそこ腰があって荷重がかけやすいんだけど、足つきのためにサイドが落とされてて断面形状がカマボコみたいになってるので、長く乗るとちょっとお尻が痛い。ただあんまり前下がりになってないのは好印象。

タンクの形状は非常に良い。最近のバイクはタンクの幅が広くて、なおかつ手前に向かって絞り込まれているものが多く、普通に乗ると膝頭しかタンクに接しないものが多いのだが、このバイクは内腿全体がピタッとフィットする。おかげで上半身に無駄な力が入らないので疲れにくい。

 

足つき性は抜群で180cmで両足裏ベッタリ+膝がめちゃくちゃ曲がる。身長160cmあれば多分余裕だと思う。ちなみにモデルチェンジするたびに低くなっていて、さらにLD(ローダウン)モデルもあるので、足つきに不安がある人は年式が新しいものを購入するのがいい。

 

取り回しは車重が153kgしかないので軽いんだけど、Vツインエンジンは前後長が長く、マスの集中化という点では不利なのでMTやZに比べるとやや重い印象。

 

エンジン

10万キロ超えの過走行車なのでベストコンディションとは言い難いのだが、それでも低回転では粘りがあるし、高回転までよどみなく回るのはさすがだと思った。

ベースは1982年に登場したVT250FCのエンジン。それを大きな変更なく使っているのだが、1986年登場のVT250FGでは43馬力まで絞りだしたのを、VTRでは32馬力までデチューンしているので、かなり低中速でのトルクは太い。無理にパワーを絞り出さず低中速に余裕を持たせるという戦略はスズキのVストロームやGSXなどとも同じだが、スズキの方がもう少し軽く回る印象。その代わりVTRの方がVツインエンジンであるだけにパルス感はある。

90°Vツインエンジンは理論上1次振動がゼロなので常用域では振動はほとんどない。高回転まで回せばシート付近に微振動が出るが、その領域を使った走りをしてる時は多分ライダーもアドレナリンが出てるのであんまり気にならないはず。

40~60km/hでの心地よさを追求してセッティングされたエンジンということで、確かにその領域で走っている分には何の不満もないのだが、峠でちょっとペース上げ気味にするとエンジンというよりミッションに不満が出てくる。前モデルのゼルビスまでは6速だったのにVTRになってからは5速になってしまっているので、タイトなワインディングの上りなどでは2速だと低すぎるし3速だと高すぎるという場面が頻繁に出てくる。その点スズキの250は6速でなおかつクロスミッションなのでパワー不足を補っている。コストの問題なんだろうがVTRも6速にしてほしかった。

 

ハンドリング 車体

この個体、過走行なだけでなく事故車でピポット付近に歪みがあり、極低速だと妙にフラフラしたり、右と左で寝かせた時のハンドルの切れ方が違ったりする。またタイヤも後ろが真ん中ばかり減ってたり、前後で銘柄が違ったりしているので、本来のハンドリングとはおそらくほど遠い状態である。なので以下はあくまでそういう車体であるという前提で読んでいただきたい。

交差点を曲がる程度の低速では、寝かすと割とスパッと舵角がつくが、ある程度のところでちゃんと収まるので、曲がっている間ずっとイン側の手で押さなきゃいけないとか、立ちが強くて寝てくれないというようなことはない。素直なハンドリングである。

寝かし込みは割と手応えがある感じで、僕の乗ってるMT-07の方がずっと軽い。ただこのくらいの方が常識的な速度で走る分には安定感があって乗りやすいし、ジムカーナーで人気があるところを見るとタイヤのチョイスや乗り方次第で素早く寝かすこともできるんだと思う。

高速域でのコーナーリングは寝かせても舵角があまりつかず、どこまでも寝てしまおうとする感じで不安感がある。またフロントの接地感があまりないので深く寝かすことができず、そのためアクセルを開けると外にはらんでしまう。まあこれは事故車だからということで間違いないと思う。この操安じゃ社内のテストを通過しないはずだ。

下の筑波でのレースでVTRが1分8秒台というベストラップでぶっちぎり優勝してるが、ベースの良い車体じゃなけりゃどんなにいじっても1分8秒台は出せない。本調子なら高速でのコーナーリングも安定しているはずだ。

ちなみに上の動画のVTRはSPADAのミッションが入ってるらしい。SPADAのミッションはかなりクロスしてるからサーキット走るにはもってこいだろう。

 

ちょっと話がそれるが、VTRのフレームはピポット部分を持たないピポットレスフレームというもので、クランクケースの後端でスイングアームを支持する形になってる。

ホンダ公式(https://www.honda.co.jp/VTR/performance/)より

ホンダは90年代末から2000年くらいにかけて市販車のみならずレースでもかなり積極的にこのフレームを取り入れていた。ホンダはエンジンパワーがあるからストレートでは速いんだけど、そのパワーを受け止めるためにフレーム剛性を高めると曲がらなくなるというジレンマがあって、それを解決するためにこの形のフレームを選んだようだ(なおオリジナルはDUCATI)。結局レースではあまり結果を残せなかったんだけど、市販車においては部品点数が減らせてコストダウンになるし、適度にしなってよく曲がるしでなかなか好評だったみたい。実際に昔乗ってたアルミツインスパーのSPADAと比べると乗り味が柔らかい気がする。まあエンジン降ろす時に面倒くさいっていう欠点はあるんだけど。

あとこの頃からサスはガッチリさせてフレームはしならせるっていう車体設計がメジャーになってきた気がする。例えばSPADAとVTRを比較すると、SPADAはフレーム剛性は高いがフロントフォークは39mmとやや細く剛性が低い。逆にVTRはフレームは細い鉄棒を組み合わせたトラス型で剛性が低いものの、フォークは41mmとかなり太いものを使っている。最近ではジクサー150みたいな軽量、ローパワーなバイクにまで41mmのフォークが使われててびっくりした。思うに90年代末くらいからフレームの解析技術が進んで、車体全体を使って曲がるような設計ができるようになったんじゃないだろうか。まああくまで推測だけど。

 

話をVTRに戻そう。

サスは初期の動きが渋くてちょっとバタバタしてるが、これは経年劣化のせいだろう。乗り心地がちょっと悪いのを我慢すれば、別にふわついたりしないので特に問題はない。

 

ブレーキはまあ及第点というところ。自分で買って乗るとしたらパッドくらいは交換したい。できればラジアルマスターなんかも入れてコントロール性も良くしたいかな。

 

まとめ

VTシリーズってSPADAとVT250FEしか乗ったことないんだけど、少なくともその2台に関してはエンジンはいいけど、ハンドリングに関してはちょっと無機質で面白みがないなと思ってた。万人に乗りやすいっていうのはそういうことなのかなと思ってたんだけど、VTRは本調子だったらハンドリングもかなり面白いバイクなんじゃないかと思う。バイクは趣味の乗り物だから、乗りやすいだけじゃなくて面白いってのは非常に大切なことだ。しかし車体がいいだけにミッションが5速なのは本当に残念。まあかなり低速寄りにトルクを振ってるから、峠をガンガン攻めるとかじゃなけりゃ問題ないんだけど。自分で買ったらSPADAのミッション入れちゃうかな。

 

ディテール

1982年の登場から基本設計の変更なしに実に35年も使われてきた90°Vツインエンジン。耐久性抜群で、この個体もオーバーホールなしに10万キロ超えてる。

 

41mmと太いフォーク。

太ももによくフィットするタンク。

 

シートはさほど前下がりじゃない。

 

ハンドルはちょっとアップしたものになってる。マイチェン後はノーマルでもこの位の高さ。

 

初期型はタコメーターがない。DUCATIモンスターのオマージュと言えなくもないが、多分コストの問題だろう。評判が悪かったのか、マイチェン後はタコメーターが装備されている。

 

リアサスはリンクレス。

 

FIになってからの尻下がりデザインより初期型のこのデザインの方が好き。

 

OVERの何用か分からないサイレンサーが溶接でついてる。おかげで弾けるようなパルス感を感じることができる(ちょっとうるさい)。

 

ホンダの開発陣曰く「モンスターとはたまたま似てしまっただけ」とのことだが、さすがにその言い訳は厳しくないですかね。

 

【用途別】初心者に本当にお薦めできる250バイク4選!【忖度なし】

250ccは比較的初心者にも乗りやすい車種が多いカテゴリーですが、ここでは自分が乗った中で特にお薦めできるバイクを記していきたいと思います。

 

 

初心者にお薦めできるバイクって?

本題に入る前に、まず初心者の定義をしておきます。この辺あいまいだと誰に向けて書いているのか分からなくなってしまうので。この記事での初心者とはバイクに乗り始めて1年以内くらいの人を想定しています。まあほぼ免許取り立ての方ですかね。そういう方向けに最初の1台としてのお薦めできるバイクを挙げるという趣旨です。

 

お薦めの基準はまずは扱いやすいこと。難しいバイクを乗りこなす楽しみもあるでしょうが、仮に最初の1台とすれば、最初から難しいのに乗ると楽しくなる前に降りてしまうこともあると思うので「扱いやすい」は重要だと思います。

次は操っている実感を得やすいこと。抽象的な表現になってしまって申し訳ないんですが、実際に、乗りやすいんだけどイマイチ面白くないとか、速いんだけどイマイチ楽しくないみたいなバイクがあるんですよね。そういうバイクに共通してるのは操ってる実感に乏しいことなんです。まあさらに高いレベルまで到達すると楽しさを感じられるバイクもあるのかもしれませんが、そういったバイクは初心者向けではないので、当然除外しています(もっとも250ccクラスにそういうバイクはほぼないですが)。

さらに、(また抽象的になってしまうんですが)爽快感があること。結局バイクの魅力ってこれに尽きると思うんですよね。それは必ずしも速いことを意味しません。数字上のスピードはそんなに出てなくても爽快感を感じられるバイクもあるんです。

 

さて、250ccのバイクは比較的万能なバイクが多いですが、それでも用途によって多少の向き不向きはありますので、用途別に記したいと思います。

それでは本題へ。

 

 

 

街乗り+時々ちょっとロングツーリングも

Vストローム250

ツーリングといえばやはりVストローム250でしょう。かなりローギヤード(最高速は130km/hくらい)なので高速巡行時はエンジンの回転数がやや高いのが難点ですが、積載性の高いキャリア、小ぶりながらうまく走行風をいなしてくれるスクリーン、189kgと250にしてはやや重めな車重も安定性に貢献しており、250カテゴリーではツーリングに必要な要素を最も満たしているバイクだと思います。エンジン回転数が高くなりがちと書きましたが、高回転でもシルキーなエンジンなので、回して走ってもさほど疲れないと思います。純正オプションのパニアケースを使えば63リットルもの荷物を積むことができ(さらにキャリア上に積載可能)、最近流行りのキャンプツーリングなどにも最適ではないでしょうか。

 

ほぼ街乗りオンリー

レブル250

最高の足つき性でストップ&ゴーの多い街乗りでは非常に乗りやすいです。乗車姿勢も楽で、ゆっくり走っても疲れません。太いフロントタイヤは多少クセはありますが、大型アメリカンのように切れ込んでくるわけではなく、基本的には素直です。エンジンも低速トルクが太く、なおかつ振動も少ないので扱いやすいです。半面、上体が起きた姿勢になるので、高速でのクルージングはややしんどいです。またアメリカンにしては比較的高く後ろにステップがありますが、それでもSSやネイキッドに比べればバンク角は少な目なので、ペースを上げて峠を走りたい場合などは多少不満が残るかもしれません。

 

街乗り+ちょっとスポーティーに

GSX-250R

はっきり言ってパワーはあんまりないので、絶対的な速さで言えばYZF-R25とかニンジャ250の方が速いです。ただ低いパワーながらミッションの設定が絶妙なのでシフトチェンジで加速が途切れにくいです。ですので、峠でも体感的にはかなり速く感じます。また無理に高回転域にトルクを振っていないので見知らぬワインディングで回転数が落ちてもモタつくことはないし、市街地でキビキビ走るのも得意です。乗車姿勢もライバル達より上体が起きて楽なので、街乗りでも疲れにくいです。

 

街乗り+もうちょっとスポーティーに

ジクサーSF250

GSX-250Rに似たキャラクターですが、サスの設定や軽量な車体など、もう少しスポーツ寄りです。エンジンもパワー的にはGSX-250Rと同等程度ですが、高回転でのダイレクト感が強調されています。とは言えYZF-R25やニンジャに比べるとポジションは楽ですし、シングルなので低速トルクも太く、それらよりもっと万能なバイクと言えます。

 

スズキのバイクは万能性が高い

ここまで挙げた4台のうち3台がスズキですが、別にスズキ党っていうわけではなく、実際に乗った感想で選ぶとこうなっちゃうんですよね。スズキの250は全体的に無理に高回転・高出力を追求せず、実用域での扱いやすさに割り切ってエンジンを設計していると思います。こう書くとなんか遅いバイクみたいですが、ミッションをローレシオかつクロスミッションにすることで最高速を捨てる代わりに加速はライバルに劣らないどころか、体感的にはむしろ速いんじゃないかとすら感じます。

またポジションも、どのバイクもどんなシチュエーションでも対応できるように設定しているので、エンジン特性と合わさってあらゆる用途に使える万能性を備えていると思います。例えばVストロームで峠をガンガン攻めることもできるし、ジクサーをロングツーリングに使うことも(積載性を除けば)特に問題なくできるでしょう。

 

他のバイクはどうなの?

上に挙げた以外で乗ったことのある250ccバイクはMT-25、YZF-R25、CB250R、CBR250RRです。

MT-25、YZF-R25はともにいいバイクですが、250ccというキャパシティーや排ガス規制という制約のなかでちょっと無理に高回転・高出力にしすぎている感じがします。別に低回転のトルクが扱いにくいほど細いっていうことはないんですが、スズキの250の方が高出力を捨てた代わりに実用域が力強く公道ではアドバンテージがある気がします(速いという意味ではない)。YZF、MTにはそれぞれR3、03があるので、車検が気にならないのであればそちらの方をお薦めします。

CB250Rはレブルと同じエンジンで低速トルクも太く、ハンドリングも適度にスポーティーな万能バイクですが、乗り心地がやや硬いのが少々気になりました。

CBRはかなりスポーツに割り切ったバイクで、峠のみならずサーキットでも十分通用するエンジンや足回りですが、ポジションがきつく、エンジンもヤマハ以上に高回転・高出力に振っているので初心者が乗ることを楽しむにはやや敷居が高い印象です。

 

まとめ

シチュエーション別にあえて1台挙げるとこういう結果になりましたが、250ccクラスはCBR250RRを除けばどのバイクも扱いやすく様々な用途に対応しやすいです。CBRも80年代、90年代のレプリカほど実用性を無視した設定ではないので、初心者でも乗りにくいというほどではないと思います。特にお薦めは上記4台ではあるものの、それ以外のバイクを選んでも後悔することはないと思います。

CBR250RR(1991)インプレ

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この前、現行CBR250RRをインプレしたので、旧CBR250RR(MC22)も記憶を頼りにインプレ。

 

 

 

乗ったシチュエーション

1997年にニフティサーブ(当時のネット掲示板みたいなもの)のバイク個人売買にて17万円で購入。半年ほど所有した。

ほとんど街乗りであとは峠がちょっと。

 

ポジション 取り回し

足つきはめちゃくちゃ良い。今のCBR250RRも悪くないがさらに良かった。80年代から90年代始めのバイクは重心が低ければ低いほど良いっていう設計思想があってこのバイクはその究極形みたいなもの。

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それをよく表してるのがこのフレーム。LCGフレームというツインスパーの一部を曲げたようなフレームは、エンジンの懸架位置を下げることにより低重心を実現している。加えてバイク本体だけでなく人が乗った時の重心も下げるためにシッティングポジションもめちゃくちゃ低い。だから足つきもベタベタにいいわけ。最近のバイクがあえて重心を上げて旋回性を高めようとしてるのとは真逆だったわけだ。

 

ポジションはかなりコンパクトで身長180cmだとやや窮屈だった。ハンドルは現行のCBR250RRよりバー1本分くらい低かったと思う。ステップ位置は現行CBRよりやや高め。今の基準からするとけっこうレーシーなポジションだが、当時としてはこれでも楽な方だった。タンクは手前側にかなり絞られていて、腰をずらして乗ると内股がピタッとフィットするが、普通に乗ると膝頭しか接しない。今のCBRもそういう傾向ではあるが、昔の方がより顕著で、ハングオフ前提のタンク形状だった。

 

取り回しは車重は軽いんだけどハンドルが低いので車格にしてはちょっと大変だった記憶がある。

 

エンジン

超高回転型のエンジンがこのバイクの最大の魅力。レッドゾーンはなんと19000回転から!カワサキのZXR250も19000回転からレッドゾーンだったが、あっちは正直回るか回らないか微妙なとこだったんだけど、こいつは本当にそこまで回ってさらに上までいきそうなほどだった。

超高回転型だからといって低速トルクがないわけでもなく、街乗りくらいだったら7000回転くらいでシフトアップしていっても車の流れには十分乗れた。そうは言っても真価を発揮するのはやはり10000回転くらいから。できれば12000回転以上回したい。そこからレッドゾーンまではアクセルに対してリニアにレスポンスし、2ストにもひけを取らないんじゃないかと思うくらい速かった。

音もマフラーからの低音とカムギアトレインの高音が混ざって非常にレーシーだった。後のホーネットより低音が効いていた印象だった。

 

ハンドリング 車体

ハンドリングは極めて素直で、低重心ゆえに安定感も抜群だったんだけど、街乗り程度だとなんかこういまひとつ面白味に欠けるっていうか、ちょっと無味乾燥な感じだった。今思えばこれは、その程度の速度域じゃエンジンに対してフレーム剛性が高すぎて、フレームをしならせることができなかったからではないかと思う。峠でそこそこペースを上がると本領発揮で、前後タイヤがベタッと路面に張りついたように安定して曲がる。ここまで接地感が高いバイクは自分の乗ったバイクだと他には2002年式R1くらい。安定感があるのにリーンはとても軽い。

ちなみに安定感の高さとシッティングポジションの低さで膝擦りには最適だった。僕が最初に膝擦りしたのもこのマシン。

 

ブレーキは前後とも効きもコントロール性も抜群。

 

サスはやや柔らかめだったが、フレーム剛性が高いのでサスまで硬かったらちょっと乗りにくかったと思う。

 

まとめ

一言で言えば極めて完成度の高いバイク。250ccクラスでここまで完成度の高いバイク(速さだけじゃなく)は後にも先にも無いと思う。

しかしまあいつも同じことを言うようだが、これほどのバイクが60万円切ってたんだからね、信じられんよ。今のCBR250RRが安い方で821,700円と20万円以上、1.3倍くらい高いからね。排ガス規制に対応しなきゃならんとか開発環境の違いもあるから一概には比較できんとは言えだ、あまりにも高くなりすぎてる。まあその分給料も上がってればいいんだけどそうはなってないからなあ。

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上のグラフは大卒初任給の推移なんだけど、このバイクが出たちょっと後、92年くらいから今日までは給料の伸びは極めて鈍くて19万円から21万円になったくらい。割合にして1.1倍。しかもその後の昇給もあんまり期待できないとなればバイクなんて買えないよね。で、売れないから価格が上がる→さらに手が届かなくなるという悪循環。250クラスなんてほぼ国内市場(最近は東南アジアもあるが)だから、市場規模が小さいのでなおさらその傾向が強い。250クラスはかつては若者の入門クラスだったんだが、今の若者はそもそもバイクなんて手が出ないわ。ヤバいぞ、この国。

ジクサー150(2019)インプレ

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乗ったシチュエーション

ツーリング途中、亀石の駐車場で後輩から借りて試乗。

 

ポジション 取り回し

シート高は785mmという数値よりやや高く感じるけど、車体がスリムなので足つき性はまあまあ。身長180cmで両足裏がついて軽く膝が曲がるくらい。ただぱっと見の印象よりはちょっと悪い感じ。なんせ華奢なんでカブとかと同じくらいかと思ったけど、そこまで低くはなかった。まああくまでぱっと見の印象よりはという話で、別に特に困ることはない。

 

取り回しは車体が軽量なうえにハンドル位置が高いんで超楽。これは本当にカブ並みと言っても過言ではない。

 

ポジションはハンドルが近くてコンパクトにまとまっている。ステップ位置はやや低め。腕や膝に負担がかからない乗車姿勢。車格の割にはちょっとハンドル幅が広めかな。身長180cmでも窮屈さはない。シートが多少前下がりだけど気になるほどじゃない。座面はそこそこ腰があって荷重もかけやすいし、おそらく長時間乗ってもお尻が痛くなりにくいんじゃないだろうか。

 

エンジン

150ccという排気量に14馬力という数字から分かるようにパワー感はない。だが、思いのほか普通に走れる。小排気量車だと発進に気を使って回転を上げたり半クラを長めに使ったりすることもあるが、このバイクはそういった気遣いは無用。普通に走り出せば車の流れに乗る程度には十分加速する。

不快な振動はなく、トルクもフラットに出るので、盛り上がりや味わいはないもののとても扱いやすい。

 

ハンドリング 車体

交差点を曲がる程度のコーナリングと軽いスラロームでの感想だが、極めてニュートラルなフロントの動きが印象的。切れすぎてイン側の手で押さなきゃならないこともないし、切れなさすぎてバイクが寝過ぎてしまうこともなく大変乗りやすい。あくまで低速での印象ではあるが、低速でハンドリングのいいバイクは速度が上がってもたいてい乗りやすいものだ(少なくとも公道の常識的な範囲では)。寝かしこみもヒラリヒラリと軽く、小排気量車の面目躍如といったところ。生意気にも(?)リアはラジアルタイヤを標準装備してるので接地感もまあまあ高い。

 

サスは割と柔らかくまたがっただけでかなり沈み込む。ブレーキング時のノーズダイブもやや大きめ。街中で軽快に走るにはいいがワインディングでスピードを上げ気味にするとちょっとバタつきそうな印象はある。ただ峠で膝擦ってやろうとか思わない限り特に問題になることはないだろう。

 

ブレーキはごく普通。効きもコントロール性も及第点といったところ。

 

まとめ

街乗りメインだけどスクーターじゃちょっと物足りないという人にはぴったりなバイク。ツーリング用としても、今回伊豆半島を半周したんだけど、オーナーである後輩の感想としてはその程度では特に疲れることもないとのこと。後ろから走りを見てたけど特に加速が悪いということもないし、近場の日帰りツーリング程度なら十分こなすだろう。燃費がすごく良くて、ガソリン満タンで一緒に走り始めて僕のMT-07が給油する頃(多分180kmくらい)にまだ1/3くらいしか減ってなかった。カタログ燃費が51km/lらしいけど、実際にも40km/lくらいは走りそうだ。これも街乗りに使うには大きなメリットだろう。

最近のスズキの小排気量車は本当にすごい。ジクサーシリーズ、GSR250、GSX250R等コストパフォーマンスが他社より頭一つ抜けてると思う。ジクサー150もグーバイクで実売価格見たら新車が乗り出しで31万円からあったからね(スズキは値引きをけっこうするので、実売価格では他社より安くなる)。ただし勘違いしてはいけないのは、スズキは数字でわかるパフォーマンスは求めていないこと。GSX-250Rで顕著だけど、数値上のパワーは他社の同クラスよりはるかに低い。しかし数値化できない乗っての楽しさなら他社に劣らないどころか、公道に限れば上を行ってるのではないかとすら思える。もし今僕が250スポーツを買うなら、ジクサーSF250かGSX-250Rを選ぶだろう。スズキは一般ユーザーの楽しませ方を本当に良く分かってる。ジクサー150はその象徴とも言えるのではないだろうか。

 

ディテール

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BYBRE製のフロントキャリパー。普通に効く。このモデルはABSなしだった。

 

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リアタイヤはラジアル。旧CBR250RR以外では見たことない140/60という珍しいサイズ。

 

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41mmという車格にしてはかなり立派なフロントフォーク。

 

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250と同じ2本の排気口を持つマフラー。

 

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リアサスはリンクレス。

 

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エンジンは250と違って空冷。

 

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シートは硬すぎず柔らかすぎずなかなかいい。

 

CBR250RR(2020)インプレ

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前から興味があった現代のCBR250RR。ホンダのマジがつまった250SSの実力はいかに。

 

 

 

乗ったシチュエーション

レンタルバイクにて比較的速度の乗るワインディングを1時間試乗。気温は14℃とやや低めだが、僕の直前に乗っていた人がいるのでタイヤの温まりに問題なし。

 

ポジション 取り回し

かなり本気モードの前傾姿勢と聞いていたので、頸椎ヘルニア持ちが耐えられるかちょっと心配だったんだが、意外とそんなでもなかった。ハンドルは低いには低いが、比較的近めなので上体の前傾度はそこまででもない。街中でも十分使えるレベル。YZF-R25とそんなに変わらない。SV650Xの方がもっと前傾だった。

ステップの位置もさほど後ろではなく、膝の曲がりもそんなにきつくない。

80年代レプリカのような超戦闘的スタイルを想像していたのでちょっと拍子抜け。でも常識的に考えれば公道ではこの程度が限度だと思う。これ以上前傾が強まってアイポイントが下がると危険だろう。

シートは多少前下がりではあるものの座面形状自体はフラットでなおかつ面積も広いので荷重がかけやすく、ブレーキング時もお尻が前にずれてこない。これはいい。シートの前下がりが強いバイクはシッティングポイントが限定されちゃって自由に身体が動かせない。レースで使うバイクで前下がりのシートなんてないからね。

タンクは手前側が絞りこまれててお尻をずらしたハングオフの姿勢をとると内腿がピタッとフィットする。

 

足つきは身長180cmで両足裏がついてなおかつ両膝が少し曲がるくらい。かなり良好な足つき性だと思う。

 

取り回しはハンドルが低くまたタンクとハンドルの隙間が小さいので、フルロック状態で切り返したりするのはちょっと大変かも。とはいえ車重が軽いのでたかが知れてる。

 

エンジン

低回転から高回転までフラットにトルクが出るが、アクセルに対するツキがいいのは8000回転以上。そこからレッドゾーンが始まる14000回転まで2気筒らしからぬ吹け上がりを見せる。250cc2気筒最強の41馬力は伊達じゃない。とはいえやはり250cc故の限界はあって、峠の上りでは10000回転以上をキープしないと加速は鈍りがちだし、トラクションがかからないので旋回性も高まらない。そのためかなり忙しくシフトチェンジをする必要がある。

パルス感はあまり感じられず、高回転では4気筒のようなクオーンという高音が強調されたサウンドを奏でる。

吹け上がり方もサウンドもあまりツインらしくないが、バイクのキャラクターにはよく合ってると思う。

モードがコンフォート、スポーツ、スポーツ+と3種類あるんだけど、250cc程度の排気量じゃ正直さほど違いは感じられない。限界までパワー絞り出してるからね。コンフォートが多少ダルな反応かなというくらい。

不快な振動は全くない。高回転で多少ハンドルに振動があるかなという程度。とにかく高回転までスムーズに回る。

スリッパー&アシストクラッチがついてるのでシフトダウンの際にアクセルをあおらずに済む。結果としてスムーズにワインディングを走るのに貢献している。

 

ハンドリング 車体

なんか接地感がイマイチだなと思ったら前後ともバイアスのツーリングタイヤでしかも前後で銘柄違い。純正では前後ともラジアルのGPR300のはずなんだが。こういうのは商売でレンタルバイクやってるならちゃんとしてほしいよね。1時間のレンタル試乗する人は大方ちょっとバイクの味見したいっていう動機なんだろうから、バイクの乗り味を崩すようなことはしてほしくないものだ。まあバイアスの穏やかな舵角のつき方は嫌いじゃないけど、本来のハンドリングを知りたいよなあ。

そういうわけでハンドリングは参考程度だけど、低速でも高速でも適度に舵角がついて乗りやすい。SSらしくフロントにどっしりとした安定感がある。

寝かしこみは割と手応えがあり、思ったよりヒラヒラという感じではない。でもこのくらいの方が安心してバイクを寝かせられる。またコーナーのアプローチでブレーキを残し、リーンに合わせてブレーキを開放していくと今度はスパッと寝かしこめる。この辺はさすがSSである。

ハングオフスタイルで曲がるのが似合うけど、リーンウィズで車の後ろについてゆっくり曲がってもそこそこ楽しめる。

アクセルを開けるとまあまあ良好な二次旋回特性を見せるけど、ラジアルならもっとグイグイ曲がっていくのだろう。

 

サスペンションはかなりダンパーが効いているが、ゴツゴツした感じはない。ビギニングが良くて上質な動きをする。

 

ブレーキはコントロール性は非常に良いが、効きはごく普通。バイクのキャラクターからするともう少し強力に効いてもいいと思う。

 

まとめ

さすがにホンダが技術の粋をこらして作っただけのことはある。動力性能も運動性能も素晴らしい。デザインもいいし、各部の仕上げも上質。ただまあ80万超えの値段考えれば当然だよねとも思う。下手すりゃジクサー250が2台買える値段だからね。だからといってジクサーの2倍楽しいかと言われるとまあそんなことはないわけで、正直同じフルカウル250スポーツだったらジクサーSF250の方が楽しい(少なくとも公道では)。それで値段が半分ならまあそっち選ぶよね。フライバイワイヤとかエンジンモード切り替えとか余分なもん要らんから、その分値段がYZF-R25並だったらまだしも、この値段ならカワサキのZX-25Rの方が購買欲そそるよなあ。

今回は残念ながらホンダが後出しジャンケンに負けちゃった感じかな。いやまあセールス的にはそこそこ成功なんだけど、カワサキみたいに攻めの姿勢に出られなかったというか(ちなみにZXが登場した2020年はZXの販売台数が3098台、CBRが2423台、2021年はZXが4761台、CBRが2700台)。とはいえ250ccツインという制約の中でこれだけのものを作ったのはさすがではある。

 

ディテール

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試乗車はフロントがメッツラーのロードテック、リアがミシュランのパイロットストリートというチグハグな設定。多分バイクの持つポテンシャルをだいぶ殺しちゃってる。

 

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鋼管トラスフレームは高剛性だがそこまでガチガチではない。

 

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フロントブレーキは片押し2ポットキャリパー。もう少し効いてほしいかも。

 

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かっこいいフロントマスク。なんとなくエヴァ二号機に似てる気がする。ちなみにバックミラーの視界はイマイチ。

 

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写真だとよく分からないけど、ちゃんとリンク式のリアサス。

 

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スイングアームエンドは一見OW-01のようなタイプだが、別体パーツの溶接ではなく一体型の鋳造。

 

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なんか高級感のあるフォークキャップ。

 

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上体を伏せると、このタンク上面の窪んだところにちょうど胸がフィットする。

レブル250 S edition(2020)インプレ

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乗ったシチュエーション

ツーリング途中、亀石の駐車場で後輩から借りて試乗。40km/hくらいしか出せなかったけど市街地レベルでの挙動はつかんだつもり。

 

ポジション 取り回し

特筆すべきはやはりその足つき性の良さである。身長150cm台の方でも余裕、なんなら140cm台の方でもいけるのではないだろうか。

 

ポジションはアメリカンらしくフォワードステップにハンドルがやや高く遠め。またがるだけも含めてアメリカンにはほとんど乗ったことがないのだが、アメリカンにしてはそこそこ荷重コントロールもしやすいポジションなのではないだろうか。フォワードステップなのでステップからのコントロールはやや難しいが、シートの座面が広く、また前下がりになったりしてないので、腰でのコントロールはしやすい。

 

重厚な見た目だが車重が170kgと軽いため取り回しはいい。足つきがいいので足でバタバタ漕ぐのも楽。ただホイールベースが長めなので小回りはききにくいかもしれない。

 

エンジン

低回転はなかなかトルクがあり、またパルス感があって気持ちいい。トコトコ低速で走るのが楽しい。高回転は試せなかったが、ホンダだしその辺は抜かりないと思う。

アメリカンと言えばハーレーをはじめVツインが定番だが、シングルも悪くないと思った。

不快な振動は全くなく、アクセルレスポンスも開けても閉じても適度にダルでゆっくり走るのに適している。

 

 

ハンドリング 車体

エンジン同様ハンドリングも穏やかで、寝かし込みはゆったりしてるし、その際にハンドルが切れてくるスピードもゆっくり。バイクのキャラクターによく合ってる。

低速度でのコーナリング、軽いスラローム程度しかできなかったがなかなか楽しめた。

アメリカンはキャスターが大きく寝てるものが多く、そうすると交差点を曲がる程度の極低速ではハンドルがものすごく切れ込んでくることがある。キャスターが寝ると直進安定性が高くなると思われがちだが、それはある程度速度が出てから(40km/hとか)の話。それ以下の速度域ではキャスターが寝れば寝るほど切れ込みは強くなる。

このバイクも寝かすとイン側の手に多少手ごたえを感じるが、切れ込みというほどのものではない。このくらいの方が交差点を曲がる際などに無駄にバイクを傾けずにすむ。これは28°という比較的立ち気味のキャスター角が好影響を与えてるんだと思う。速度を上げたコーナーリングはできなかったが、速度を上げた時にこの押し舵傾向が減少してくれば(おそらくそうなると思うが)とてもナチュラルなハンドリングだと思う。

 

サスは硬くもなく柔らかくもなくちょうどいい感じ。

 

ブレーキはフロントは片押し2ポット、リアは片押し1ポットながら必要にして十分な制動力。

 

まとめ

本当はもう少し色々な場所を走ってみたかったが、少なくとも市街地レベルでは乗りやすく楽しいバイクだと思う。外見はうまくまとまっているもののそこまで押し出しが強くないが走りは至極真っ当。レブルは発売当初こそそこまで売れ行きが良かったわけではないらしいが、少しずつ売り上げを伸ばし今や右も左もレブルだらけ。それはこの走りの良さが徐々に知られるようになったからだと思う。個人的には一台だけ所有するならもう少しスポーティーな方が好みだが、街中やのんびりツーリング用にセカンドバイクとして持つなら最高の相棒になりそうだ。タンデムシートが小さいのでロングツーリングには積載量が厳しそうだが、そこは似合いそうなバッグ類がたくさん出てるからね。街乗り、ツーリング派には死角なしの万能バイクだ。

 

 

ディテール

エンジンはCB250RやCRF250と共通とのことだが、CB250Rより低速での粘りがある気がする。

 

4灯LEDが異形の者っぽい迫力がある。太目のフロントタイヤがデザイン上のアイデンティティであり、なおかつハンドリングに穏やかさを与えている。

 

スイングアームは安っぽい引き抜き角材ではなく凝った丸断面形状。

シートは座面が広く、また変に前下がりでないのでお尻で荷重がしやすい。柔らかすぎないのもいい。

 

フォークブーツがワイルドな印象を与える。

 

フロントのキャリパーは2ポットだが制動力は十分。ABSもあるから安心。

 

サスペンションにリザーバータンクはないが、動きに不満はない。