バイクインプレ日記

NS250F(1984)インプレ

ホンダ公式(https://www.honda.co.jp/news/1984/2840425.html)より

メーターだけだけど、一応乗ってた証拠ということで

過去を思い出しながらインプレするシリーズ。

 

 

乗ったシチュエーション

2010年頃、行きつけのバイク屋さんに転がってた不動車をタダでもらってきてレストア。2年ほど所有。ほとんど峠のみ走行。多分3回くらいしか給油してない。1回だけサーキットを走った。

 

ポジション 取り回し

今のバイクに比べるとタンクが長くてハンドルが遠い。ただハンドルの位置は比較的高いのでそんなに前傾姿勢ではなかった。

80年代から90年代半ばまでのバイクはどれも今の基準からするとシートが柔らかすぎてリアタイヤに効率的に荷重がかけられないんだが、乗り心地はまあまあだった。

 

当時のバイクはどれもシッティングポジションが低くて、足つき性はだいたい良好。このバイクもそのご多分に漏れず両足裏までベッタリだった。座る位置が低いから擦ろうと思わなくてもステップやら膝やら擦っちゃうバイクだった。

 

取り回しは今の250と比べると確実に重い。車重自体も161kgとけっこう重いしね。一度ガス欠になっちゃって2キロほど押して歩いたんだが、翌日筋肉痛で体中痛かった。今のマスが集中したバイクならもう少しマシだったろう。

 

エンジン

一応ATAC(Auto controlled Torque Amplification Chamber)というヤマハでいうところのYPVSみたいな排気デバイスがついてて、そのためか発進に神経質にならないで済む程度には低速トルクがある。

 本領発揮は5000回転以上なんだが、後のNSRみたいに胸のすくような加速を望むのは土台無理な話。なんかモサっとした吹け上がりで、あんまり2ストらしい爽快感はない。初期型TZRの方がずっと速い。まあ向こうの方が後発だから当然と言えば当然なんだが。

低回転ばかり使ってると未燃焼のオイルがチャンバー周りにベタベタついてしまう。ナンバーなんかすぐ真っ黒。高回転まで回せばオイルも燃えてくれるんだけど、その代わり白煙がすごい。ひたすら環境に悪いバイク。一度筑波でのサーキット走行会に持ち込んだんだが、後続の人はさぞかし煙たかったろう。

 

ハンドリング 車体

よくフロント16インチは切れ込んでどうしようもなかったなんて話を聞くんだけど、少なくとも自分が乗ったことのあるフロント16インチのバイクではそんなこと感じたことはない。おそらくそれは、レースレベルで限界まで攻めた時にフロントの接地感がいきなりなくなってフロントから巻き込むように転倒するということがあったらしくて、そういう話が独り歩きしたんじゃないかと思う。まあそれもそれまでのレースシーンが前後18インチが主流で、いきなり2インチも径を小さくしたからそれに慣れなかっただけなんじゃないかとも思うんだが。

そういうわけで少なくとも僕なんかのレベルの人間が普通に走ってて特別乗りにくいなんてことはなかった。

このバイクもフロントの動きに関しては素直で特にクセはなかった。ただ前述したようにハンドル位置が遠いのでなんとなくフロントの接地感が感じにくいような気はした。

寝かし込みはエンジン同様2ストらしい軽快感はあまりなくてやっぱりモサっとしてた。ただその分安心感はあった。寝かせた状態からアクセルを開けてもあんまり旋回性は高まらなくて、筑波を走った時もなんとなく立ち上がりでアクセルを開けにくいような感じはあった。

 

ちなみにNSはRとFがあって、Rはフルカウル、Fはネイキッドというのがぱっと見の違いなんだけど、実は車体構成にも違いがあって、Rはアルミフレームにアルミスイングアーム、星形コムスターホイールなのに対してFはスチールフレーム、スチールスイングアーム、ブーメランコムスターホイールという構成だった。僕の乗ってたやつはなぜかスイングアームだけRのアルミ製になってたが、それがどの程度違いを生んでたのかはオリジナルのFに乗ったことがないので分かりようもない。

 

サスはかなり柔らかいが、当時のバイクはみんなこんな感じだった。サーキットを走っても特にどうということもなかったので必要十分な性能だろう。

フロントにはTRACというアンチノーズダイブシステムがついていて、動きが不自然と言われてけっこう嫌われてるんだけど、個人的にはそこまで違和感は感じなかった。ただ、このシステム、メンテが悪いとホントにフォークの動きを悪くするようで、その辺も嫌われる要因だったのかもしれない。

 

ブレーキはダブルディスクだけど今時のバイクに比べると効きもコントロールも悪いけど、それでもそれなりには走れた。一応ホースをメッシュに変えてたが、それだけでもだいぶマシになった。パッド交換すればもっと変わったと思う。

 

まとめ

このバイクを所有する前に何度かNSRに乗ったことがあって、その軽さ、吹け上がりの良さに感動して、そういうのをこいつにも期待したんだけど、全然期待外れだった。まあNSR並の完成度だったらたった1年で消えたりしないよねえ。

80年代のホンダはMVXといいこのNSといい2ストに関しては失敗続きで完全にヤマハ、スズキの後塵を拝してたんだが、NSRで一気に逆転してセールスでもレースでの戦績でも他社を寄せつけなかったんだよね。

NSは過渡期に生まれた可哀想な子とも言えるけど、NSでの90°Vツインの経験が後のNSR開発に道を開いたと考えればまあ無駄ではなかったのかもしれない。