長いので結論から先に言うと、低速トルクがある=低速でスムーズってわけじゃないよって話です。
はじめに
よく単気筒や2気筒は低速(低回転)トルクがあると聞いたのに、実際乗ってみたら低速でギクシャクする、という話を聞く。例えば↓みたいに。
質問者はSRで2速10km/hでギクシャクする(質問者はノッキングと言っているが)と書いているが、これがCB400SFであればそんなにギクシャクすることはないだろう。何故低速トルクが太いと言われるSRの方がギクシャクするのか。それはSRが単気筒でCBが4気筒だからである。
なぜ単気筒はギクシャクするのか
4サイクルエンジンは、単気筒の場合クランク軸が2回転(720°)するごとに1回爆発する。下の動画が分かりやすい。
これが四気筒エンジンの場合、クランク軸が2回転する間に4回爆発するのである(詳しい理由は省略)。エンジンは爆発によって力を得るので、爆発の間隔が短いほど力が途切れにくい。単気筒は1回の爆発力は大きいが、爆発と爆発の間隔が長い。4気筒は1回の爆発力は小さいが爆発の間隔が短い。1速や2速で10km/h程度で走る場合、大してエンジンの力は要らないから、1回の爆発力が弱くてもたくさん爆発してくれる方が粘りが出る(失速しない)。逆に1回の爆発力が強くとも間隔が長いと、次の爆発までの間に失速してエンスト気味になることもある。
また1回の爆発力が大きいということは、アクセルを開けるとその瞬間ドンと前へ出るということであり、そしてこのドンと出るということが「トルクがある」ということである。
低速でアクセル開ける→ドンと前に出る→次の爆発まで間隔があるからエンスト気味になる→プラグに着火して爆発する→ドンと前に出る、という繰り返しだからギクシャクするのである。あえて誤解を恐れずに言うなら、低速トルクがあるからギクシャクするのである。
高回転になれば、単気筒でも爆発間隔が短くなる(エンジン回転数1000回転なら1分間に500回爆発、5000回転なら1分間に2500回爆発することになる)ので、ギクシャクしなくなる。
低速での粘りとクランクマスの関係
また低速でギクシャクするかどうかはクランクの重さも大きく影響する。クランクとは上の動画で回転している半円形の部分である。この部分が重いと低速でギクシャクしにくい。
例えばこんな風にスタンドを立てた自転車のタイヤを手で回すことを想像してほしい。
(出典https://blogs.yahoo.co.jp/wdwwq181/55639926.html)
この自転車の車輪なら簡単に手で回せるし、タイヤをつかんで止めることも簡単だろう。ところがこの車輪が仮に100kgくらいあったらどうだろう?回すのにすごく力が必要になるはずだ。そしていったん勢いがついてしまったら止めるのにもやっぱりすごく力が必要になるだろう。要するに慣性力が大きくなるから、回すのも止めるのも大変になるわけだ。
これをエンジンに当てはめるとどうなるか。自転車の例で車輪に相当するのがクランクである。クランクが重いと動かすのに大きな力が必要になる。ということはアクセルを開けてもドンと強く車体を前に進めることができなくなる。逆に止めるのも大変になるからアクセルオフでもエンジンブレーキの効きが弱くなる。だからアクセルを開けた時にモサっとしか前に出なくなり、アクセルを閉じた時には急激なエンブレがかからないから、アクセルに対する反応が悪い代わりにギクシャクしにくい特性になる。
一般的に言って同じ排気量なら単気筒より4気筒の方がクランクが重い。これが単気筒より4気筒の方がギクシャクしにくいもう一つの大きな理由である。ちなみにSRは単気筒の中ではクランクが重く低速でも扱いやすいのだが、上の質問者さんは初心者みたいだからね。
他にもキャブレターやインジェクションのセッティングとかギア比とか圧縮比とか色んな要素があるんだけど、長くなるのでこの辺で。
以上、極めてざっくり書いたので、詳しい人にとっては突っ込みどころ満載だと思うけど、その辺はご容赦を🤲