バイクインプレ日記

ボルトRスペック(2020)インプレ

 

 

乗ったシチュエーション

いつものレンタル819南箱根店で1時間レンタル。本当はトライアンフに乗りたかったんだけど、先約があって、他はほとんど乗りつくしちゃったのでやむを得ずこれにした。結果としては大正解だった。

コースはレンタル819南箱根店から国道1号線に出て山中城を回って戻るというルートを2周。ほとんどが大きいカーブのワインディング。

気温は13℃くらいでやや寒かったが、タイヤの温まりに大きな影響はなかったようである。

 

ポジション 取り回し

フォワードステップに高いハンドルという標準的アメリカン(厳密にはホバーというらしい)スタイル。フォワードステップのバイクにはほとんど乗ったことがないので最初はやや違和感があったがしばらくすると慣れた。タンクが細く、右にエアクリーナーボックス、左にはシリンダーヘッドが張り出しているのでニーグリップはできない。ニーグリップなしでバイクのコントロールなんてできるのかと思ったが意外といける。

シートはめちゃくちゃ低くて多分身長160cmもあれば両足べったりだろう。

シート形状はやや後ろ下がりでお尻がスポッとはまる感じ。前後左右に動くのは無理。このシート形状とフォワードステップのおかげでニーグリップできなくてもけっこうブレーキングの減速Gに耐えられる。

意外だったのはあんまり安楽じゃないこと。慣れの問題かもしれないけどフォワードステップに起きた上体という姿勢は腹筋に力が入らなくてけっこう疲れる。

 

車重が252kgとそこそこあるのでスタンドを払うために車体を起こすとけっこう重さを感じる。ただ前述したように足つき性がめちゃくちゃいいので脚に力が入りやすく、リッター4気筒ネイキッドに比べれば楽だし、起こしてから直立を保つ際にも安心感がある。僕は身長が180cmあるので足つきにはあんまり困らないんだが、それでも運動性能が同等ならシート高は低いに越したことはないと思う。

 

取り回しは車重なりといったところ。重心が低い分だけXJR1300やCB1300あたりよりは軽いと思う。

 

エンジン

狭角Vツインのドンドコというパルス感が印象的。ほどよい振動があってそれもトルク感を感じさせて好感が持てる。

おそらくクランクマスがかなり大きいので、レスポンスがいいとは言い難いが、神経質なところがなく乗りやすい。20km/h以下くらいの極低速で1速でもギクシャクしないし、2速でもノンスナッチで走れる。

回転計がないのでどの程度回っているのか正確には分からないけど、自分が試した範囲では高回転までスムーズに吹け上がってくれた。

数字上は54馬力しかないが、全然不足は感じない。

総じて公道で使うには非常に扱いやすいキャラクターのエンジンだと感じた。

 

ハンドリング 車体

割とフロントの内向性が強め。もっと言えばやや切れ込み気味。特に交差点を曲がるような低速で浅いバンク角の時に顕著。ただこの切れ込み感が嫌な感じではない。具体的に言うとフロントが切れてきてもバイクを寝かすことを阻害しない。一般的にフロントが切れ込んでくるとバイクは起き上がってくるものだが、このバイクはそういったことがない。正確に言えば全くないわけじゃないけど非常に小さい。イン側の手に多少の手応えを感じつつも身体重心をイン側に移動させればスッとバンクしてくれる。思えばヤマハのバイクはそういうハンドリングが多い気がする。XJR1200、1300とか初代V-MAXがそんな感じだった。これがCB400SF(NC31)とかNC750、Z900RSあたりだとそうはいかない。ガクッとフロントが切れ込んで、寝かせようとしてもフロントがつっかえ棒になったように決して寝てくれない。まるで絶対にバンクさせないという強い意志をバイクが持っているかのようだ。だから遠心力に対抗するには街中の交差点を曲がるにもハングオフするしかないという有り様なのだ。

意外だったのは寝かしこむ際にフロントブレーキを引きずり気味に残した方が良く曲がるということ。この手のバイクはなるべくフロントに負担をかけずに、ブレーキングもリア中心、コーナーを曲がるときは教習所で習ったみたいに進入からパーシャル気味にアクセルを開けるものと思いこんでいたからけっこう驚いた。そうしてフロントブレーキを残し気味で寝かすと前述した切れ込み傾向も軽減し、フロントの接地感も高まる(ただそれをやりすぎるとすぐにステップを擦ってしまうんだが)。そこからアクセルを開けていくと立ちが強くなることもなくしっかり曲がってくれる。ホイールベースが長いから椿ラインみたいな細かいワインディングは苦手かもしれないけど、今回走ったような比較的速度の乗る緩いカーブが連続するところを走ると非常に爽快。こういう形のバイクでも操る楽しさをちゃんと考えているのはさすがヤマハである。

寝かし込みは車重なりに重さがあるが、それがかえって安心感になってダイナミックに身体を動かしてコーナーリングできる。ダイナミックに身体を動かすといってもシートでお尻の位置は固定されちゃってるので動かせるのは上半身だけだが、それでもけっこう楽しく曲がれる。お尻が固定されてる分ホールドに無駄な力も要らないしね。

さっきフォワードステップでもさほど問題ないと書いたが、確かにステップに力を入れて腰の位置を動かしたりはできないんだけど、前述したようにそもそも腰の位置は固定されてて動かしようがないし、加えて自分のMT-07に乗るときだって別に脚に力を入れてステップを踏んでいるわけではないのでさほど変わらないのである。とは言え普通のステップ位置だったらもっといいんじゃないかと思って、スイングアームピボット付近に無理やり足を引っかけて乗ってみたらすごくしっくりきた。

 

サスは柔らかいのかと思ったら意外とそうでもない。考えてみればこれほど車高が低いとあんまり柔らかいサスじゃ車体が底付しちゃうもんね。このスタイルから想像するに前後サスのストロークはかなり短いと思うんだけど、それでも別にバタついたりしない。いつもサスの動きを試す減速帯のあるカーブでも全く問題なく凹凸をいなしてくれた。まあネイキッドやSSに乗るときと比べると自然と速度域が低くなってるからというのもあるかもしれないけど。シートが柔らかいこともあって乗り心地もいい。

 

ブレーキはお世辞にも良いとは言えない。この車重でシングルディスクに片押し2ポッドキャリパーってどうよ?最近のバイクはABS標準装備だから、安全性の観点からはブレーキは効くに越したことはないと思ってるのよ、個人的には。昔のABSのないバイクでブレーキが効きすぎると握りゴケの危険があったけど、今はマシンがコントロールしてくれるからね。

ついでにこのブレーキ、コントロール性もあんまり良くないんだけど、これは遠すぎるブレーキレバーによるところが大きいと思う。ノーマルだと調整機構もないからどうしょうもない。ヤマハはどうもブレーキレバーが遠い傾向がある気がする。この前乗ったXSR900もそうだったし、XJR1300も確かそうだった。僕は手の大きさは男性としては標準的だと思うが、これ手の小さい人だと指2本掛けじゃブレーキかけられないんじゃないか?

 

まとめ

今までこの手のバイクにはまったく興味がわかなかったんだが、今回の試乗で大きく印象が変わった。公道で常識的な範囲で楽しむならこの程度の動力性能と運動性能があれば十分じゃないか?今までは実際に走るかどうかは別としてサーキットも走れるようなバイク以外は選択肢に入らなかったんだが、考えてみりゃ今乗ってるMT-07だってほとんどリーンウィズでゆっくり転がしてるだけだし。

いや、そう思うのは自分自身が年を取ったからなんだろうな。2か月に一回くらいしか乗れないから腕も落ちてるしね。

まあそんなわけで今回の試乗は自分自身の「枯れ」みたいなものを図らずも突きつけられることになったわけだが、必ずしもそれが悪いとも思わないんだよな。年を取れば若い頃みたいに体は動かないんだから低い速度域で楽しめるならむしろその方がいいんじゃないか?速さと楽しさは必ずしも比例しない気もするし。

とはいえステップの位置はもう少し後ろの方がいいかな。あとブレーキはどうにかしてくれ。

 

ディテール

ベルトドライブなんでメンテ楽々。

 

かっこいい切削ホイール。

 

しょぼいブレーキ。

 

金色のリザーバータンクがかっこいいリアサス。

 

シンプルなメーター。

 

スイッチ類もシンプル。

 

エンジンの造形がすばらしい。

 

尻がはまるシート。

 

最近のぶっといフォークを見慣れた目からすると頼りないフォークは41mm。ジクサー150と同じ(MT-07とも同じ)。

 

追記

YAMAHA ボルト C-スペック - バイク足つき アーカイブ - タンデムスタイル

Cスペックというのがあるらしくて(絶版かな?)デザイン的にはこっちのがいいな。ステップやハンドルもネイキッドに近いポジションらしいし。